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Golf Traveler! by Yoshinobu TSUKADA

クラブ・セッティング考 (4)

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クラブが選ばれる基準となるもの。

14本全てのクラブが、それぞれに選ばれる理由を持ってバッグの中に納められている。14本という数を満たすだけの為にバッグに入れられているクラブはない。足りないくらいだと感じる人も多いのでは。僕もできることなら、ドライバーからサンドウェッジまで等間隔の距離をクラブで埋めていきたいと考えている。それは簡単に言ってしまえば、距離のコントロールという不確定なものを取り除きたいから。ドライバーからの距離を等間隔で埋めるということは、その全ての番手のクラブでコントロールをしないですむケースが多くなる。距離のコントロールというのは、風や体調や調子云々で日々微妙なズレがもの、それをわかっているからみんな自分が苦手とする距離域でクラブを増やし、コントロールをすることをなるべく排除しようとしているのだと思う。前出のジーブ・シンしかり、彼もサンドウェッジ(120ヤード以内とカバー)に絶対的な自信があるから、不確定な要素を取り除く為に長い距離でクラブを増やして対応していたんじゃないのかな。またウェッジを多く入れるアメリカの選手も同じだと思う。ティーショットで距離がだせるだけに、短い距離での正確性を欠く恐れがあるのでウェッジを増やしているとも考えられる。(みんな十分に上手いじゃないか!と思うかもしれないけれど、それは人それぞれのレベルでの話であることを理解してください。)またクラブをコースに合わせて入れ替えるプロ、どこのコースでもセッティングを変えないプロといるけれど、どんなクラブを使っているかどうかなんて実はたいして意味がないと思う。ゴルファーはコースで対応を迫られるコントロールショットへの答えをクラブセッティングという形で表していると思う。

逆に考えれば、コントロールに対して自信があればクラブセッティングにはかなり幅のある選択が可能になるから、クラブをコースによって変えたりしなくても対応できるかもしれない。

僕なりに考えてだしたクラブセッティングの答え。それはどの番手をバッグに入れるか?ということではない。ウェッジを補充するとかウッド系を入れて長距離をカバーするとかではない。答えは「コントロールしやすいクラブ」または「セットの中のクラブに統一性を持たせること」どういうことかというと「すべてのクラブを同じフィーリングで振れるようにする」ということ。
これは僕が考えだしたわけじゃない、ほとんどのクラブ設計家はその事を念頭に置いてクラブを作っているはず。専門的に言えば、クラブの重心距離を揃える!です。(重心距離についてはこちらを参考に→ゴルフの図書館)これは凄い大事なことで、重心距離が違うだけでプロといえど全く同じようにスウィングすらできなくなってしまうことがある。そんなの辺り前じゃんと思う人もいると思う。だけど、自分のバッグの中身は重心距離が統一されたセッティングになっていますか?重心距離について知っている人でも、実際にはクラブ選ぶ時に重心距離でクラブを選んだりはしていないと思う。

それは多分にプロのクラブセッティングが関係していると思う。今では海外のツアープロのバッグの中身でさえ週刊誌等で見れる時代。やはり憧れのカッコいいプロの入れているクラブを使いたいと思うのはアマチュアの正直な気持ちだと思う。多少使いこなすのに難しいと分かっていても、ある意味それをバッグに納めることはステータス的な意味合いもあるんだと思う。じゃ、プロがバッグに入れているクラブは重心距離が揃っているのか?僕が見た限り重心距離にもこだわりをみせているのは片山晋呉くらいだと思う。それは彼が選んで使っているアイアンを見ればわかる。現代のクラブは距離がでるようになり、曲がりを減らす方向へとシフト、ヘッドの体積を増やす事でそれに対応してきた。ということは、アイアンとの重心距離差が大きくなるばかりとなってしまう。その差が開くばかりの重心距離を揃えるには、アイアンの重心距離を延ばしていくしかないと思う。僕が見た限り、こだわっているのは片山晋呉かな。彼がフィーリングでそれを選んでいるのか、理論で選んでいるのかはわからない。けれど、そのこだわりが彼をトップまで押し上げた要因の一つだと思う。そういえばジーブも昔からアイアンはヘッドの大きい(長い)モノを好んで使っている。昔からウッドと同じくらいの重心距離のモノを選んでいたんだ、彼はたぶんフィーリングを信じた結果その答えに辿り着いたんじゃないかな。
他のプロはどうか?正直に言って、ほとんど重心距離なんか合ったクラブを使っているとは思えない。プロも感覚では重心距離を合わせることは重要だと感じてはいる。実際にスウィングやショットの安定性がなくなるのだから。僕自身もドライバーのヘッドの大きさの変化には対応がかなり遅い方だったと思う。アイアンをタイトリストの小さいヘッドのモノを使っていた事もあり、どうしてもヘッドの大きいドライバーで同じフィーリングのスウィングをすることができなかった。しかし僕らプロも、距離の長くなったコースで戦う中でどうしても距離は欲しい。セットの中で重心距離という統合性を犠牲にしても距離が欲しいんだ。また一方でウェッジでは硬いグリーンに対応する為に、小さめのヘッドでスピンをかけようとする。アイアンも含めて、各状況に応じて必要なショットを満たす為に、重心距離というものがプロであっても犠牲になっている。そこをカバーする為にシャフトの性能に頼っているのが現実じゃないかな。
よく契約を新しくし違うメーカーのクラブを使い始めた後に調子を崩し、一戦から離れていくプロがいるけれど、この重心距離が関係している場合も多いのじゃないかな。そう考えると、この重心距離を揃えたセッティングを持つということは選手の寿命とも関係しいると考えるべきだと思う。
前に話したように、コントロールショットを減らす為にセッティングを考えるのなら、同じバッグに重心距離の違うクラブを入れる事自体がすでにコントロールショット要求しているという矛盾になる。それを番手でカバーしたところで何の意味があるのか?たぶん一流と言われる選手ほど、そこへのこだわりが強いはず。クラブを変えないというのも、いたずらに重心距離の違うクラブをセットに入れたくない現れだろうし、クラブを入れ替えるプロであっても見た目には全く違うクラブでも重心距離を変えていない可能性はあると思う。

自分もこのクラブセッティングについて書き始めた時、もっと違う答えを想像していた。いかにウッド系、ユーティリティ系、アイアン系のクラブを組み合わせていくのかというところが重要な要素なんじゃないかと考えていた。しかし、考えれば考えるほど、いろんな選手のセッティングの意味を考えるほど、単にクラブの組み合わせだけではつじつまが合わないことがあり、僕が辿りついたのはウッド系やなんやという表層的なこととは対局にある重心距離という、クラブを構成する大事な要素だった。
距離をコントロールする為に、クラブセッティングを考えるなら、まずは同じスウィングができているのが前提なはず、ではセットを構成するクラブがそれぞれ異なる重心距離を持つものだとすると、それぞれに違う違うスウィングを要求することになる。こんなバカな話はない。なるべくコントロールショットしない為に選んだクラブがスウィングの安定性を崩し、逆にスウィングのコントロールを要求している。
もし重心距離の揃ったセッティングをしているのなら、どの番手を持っても同じフィーリングで振れるはず、そうなってこそ初めてスウィングの安定性が確保できるだろうし、安定したスウィングを持つことによって実は距離のコントロールという問題にも対応できるようになるんじゃないだろうか。

これが僕の答えです。

僕らプロも含めて、やはり流行のクラブを使いたい新しい物は試したいという気持ちがあり、それがセッティングにおいて正しい判断をするのを邪魔していると思う。現実的にみれば自分が好きなクラブ使いたいクラブが、自分のスウィングに合った重心距離を持ったクラブなのかどうかは別な問題。現実を取り重心距離の揃ったセットを持つか、ロマンを取り好きなクラブを使いこなせることを夢見るのか?どちらを選ぶのも自由、ロマンを取ってもいいスコアをだす事は可能だしね。
しかし僕らプロにしてみたら、花より実を選ぶ方向でないとダメだね。たった1mが勝負を分ける場面すらあるのに、スウィングの安定性を欠くクラブセッティングというのはかなり現実離れした選択としかいいようがない。

ここまで書いて気がついて、果たして自分のクラブは重心距離が揃っているのか?調べたくなってきた。『重心距離』これが一番大事なことだと思う。
by yoshi_tsukada | 2009-05-24 00:39 | Clubs/Equipments